MeV重イオンビームの特徴

MeVイオンとは...
MeV重イオンビームとは100万電子ボルト(106eV)という非常に大きなエネルギーを持った荷電重粒子ビームのことです。現在の半導体産業における微細加工や、質量分析装置に使用されているイオンビームのエネルギーは高々104eV程度であり、MeVイオンはその100倍から1000倍以上のエネルギーを持っています。本研究室で使用されているクラスターイオンビームは1原子当たりのエネルギーが非常に低いという特徴を持っていますが、MeV重イオンビームはエネルギーが非常に大きいことが特徴であり、他の量子ビームにはない固有の現象が見られます。

電子励起効果
イオンビームが固体に進入するとエネルギーを失いながら固体中を進んでいきます。入射イオンのエネルギーが低い場合、固体中の原子と弾性衝突することによりエネルギーを失っていきます。一方、MeV程度の高エネルギーイオンの場合は、入射エネルギーは主に固体中の電子との衝突により失われます。衝突を受けた電子は励起され、さらに他の電子や格子と衝突しながらエネルギーを失っていきます。この電子励起効果がMeVイオンの特徴であり、次に述べる巨大分子放出など、これに起因した様々な現象が観測されています。


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<イオン‐原子衝突の様子>

巨大分子放出
 イオンビームを固体に照射すると構成原子・分子が表面から放出されます。これはスパッタリング現象と呼ばれており、主に無機材料を標的として、現在微細加工や薄膜形成、二次イオン質量分析などの表面微量分析に応用されています。また無機材料だけでなく、タンパク質や糖類、脂質などの生体高分子薄膜の場合にも同様の現象が起こることが分かっています。MeVイオンビームをプローブとすることでより効率よく構成分子を取り出すことができれば、生体高分子質量分析への応用が可能であり、ひいては医療・バイオテクノロジー分野への応用が期待されます。しかし現在、巨大分子イオン放出のメカニズムは良く分かっておらず、高エネルギーイオンと標的分子の相互作用による二次イオン放出メカニズムの解明が重要な課題です。本研究室ではMeV重イオン照射による生体高分子薄膜からの巨大分子イオン放出について研究を行っており、放出メカニズムの解明とMeV重イオンの応用分野開発を目指しております。

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<巨大分子放出の概念図>



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